吉川 洋 の 「人口と日本経済」 を読んでみた

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「人口と日本経済」 (吉川 洋 著)を読んでみました。

吉川先生は、東京大学の名誉教授で、日本を代表する経済学者です。

議員の藤巻健史氏が大きな影響を受けているとのことです。藤巻氏のTwitterでこの本の事をしり、図書館で借りてよんでみました。学術的な事を一般向けに書いた本で、特に待たずにすぐ借りれました。

藤巻氏は、このままでいくと日本はハイパーインフレに見舞われ、国民の資産は国に吸い上げられてしまう事になると、ずっと以前より主張され続けている方です。

私も素人ながら、ずっとそのように考え、外貨建て資産、不動産投資、金投資、仮想通貨投資を行ってきました。資産差し押さえになると、特に外国の口座や不動産ではないため、分散しても意味はないかもしれないのですが、まあ資産没収まではいかず、ハイパーインフレで終わるだろうと考えています。

さて、「人口と日本経済」 ですが、

マルサス、ケインズ、ヴィクセル、ミュルダール夫妻等の見解を交えながら、素人にもわかりやすい形で持論を述べられていて、非常にわかりやすい本だと思いました。

間違っているかもしれないですが、内容を私なりに要約してみます。

本書の吉川氏の主張の肝は、人口増減は経済成長の問題でなく、最も大事なのはイノベーションだという事です。先進国の経済発展は人口増加ではなくイノベーションで生み出されるという事ですね。

人口が多ければ必ずしも良いわけではないという事です。人口が多すぎると、物資の不足、特に食糧難により社会は不安定になるという事です。土地も不足しますね。私が子供の頃は、日本の狭い国土では人口が増えすぎると問題になると言われていましたので、しっくりきます。ドイツの2回の大戦前の膨張政策も、陰には人口の急速な膨張があったと述べています。

かたや人口が減少しすぎても経済は衰えます。需要が制限されるため、モノを作っても売れなくなります。企業活動は衰え、失業者が増えます。これもしっくりくると思います。

結局 人口というのは、増え続けても減少し続けても、いきすぎると経済に悪影響を与えるという事ですね。最適水準をキープする事が非常に大事だという事になります。

ただし、人口は一旦減り始めると容易に止まらなくなるので、人口を減らす方向にコントロールするのは容易ではありません。一方、これは吉川先生の主張として書かれているわけではないですが、人口を増加させようと思ったら子育て支援で容易に増える事が予想されます。フランスをみると子育て支援で出生率が2まで上昇していますので、その通りなのかもしれません。という事は、人工減少傾向の、先進国の状況は、子育て支援の増減である程度人口をコントロールしやすい状況であるので、人口がコントロールできない状態で増加しているよりはずっと望ましい状況なのではないかと思いました。

もっとも、高齢者の社会保障を優先して、子育て支援をないがしろにしている現状ではコントロールは移民に頼る事になるのでしょうが・・・

また、農産物を輸入、工業製品を輸出するモデルは食料価格が増加しやすいのに対し、工業製品は低下しやすいので、食料を輸入する側に不利な条件である。それを補うのはイノベーションである、といった趣旨の事を述べています。これもその通りと思いました。

日本の現状(2015年)は、社会保障給付費 116.8兆円(対GDP比23.1%)、保険料と税でまかなわれており、保険料が6割、税が4割で負担されているとのことです。基本、現役世代が負担しています。1人あたり年間平均医療費は 64歳以下17.5万円、65-74歳55.3万円、75歳以上 89.2万円とのことです。

国の借金は対GDP比で2倍に達しており、遅かれ早かれ、日本財政は破たんするだろうと述べています。これを避けるためには、経済成長して、税収を増やしながら、歳出を抑制しないといけません。少子高齢化が邪魔をして、経済成長できないという論調があるが、それは間違いだと吉川氏は言います。

吉川氏の主張によると、人口減少は経済成長に悪影響を及ぼすケースが多いが、人口増加が必ずしも経済成長を促すわけではなく、人口減少なら必ず経済が縮小するわけではない。十分なイノベーションがあれば、人工減少下でも経済成長は十分可能だという事です。

要は、次世代商品を生み出して、それを売り、所得が人口減を補う以上に増えれば経済は人口減でも発展するという事ですね。確かに、日本にApple、Google 、Facebook、各種医療機器、医薬品企業、世界的な金融機関が生まれるならば、人口減など関係なく日本は発展しているでしょうから、一理あると思いました。

また、人口がコントロールできないほど増加しすぎると、食料の供給が不足。貧困層を増やし、社会は不安定になり、経済は転ぶ。 という事も、想像しやすい話だと思いました。

吉川氏はだから少子高齢化は問題ではなく、むしろイノベーションのチャンスだと言います。

しかし、となると、イノベーションを引き起こしやすい状況に、現在の小子高齢化がどういう影響を与えるかが問題になるはずです。少子高齢化はイノベーションを起こしやすくなる?、変わらない?、起こしにくくなる? のどれかになるはずです。

このことに対しては本書では言及がありませんでした。残念ながら・・・

私は、明らかに少子高齢化はイノベーションを阻害すると思います。これは私達の世代以下の人間ならば、肌身をもって感じる事です。一体何歳になったら、一人前になれるんだと・・

年功序列社会では、少子高齢化は私は完全にイノベーションを阻害すると思います。

発展するのは、新しい産業ですが、ITバブル時の日本のイノベーター達の多くはつぶされました。つぶれなかった人たちも、社会の老人からの援助は得られず、むしろ妬まれ、適当な指導も得られず、企業を大きく成長させる機会を失いました。iPhone のタッチパネルの技術は日本で元々はうまれたものですが、発展しませんでした。多くの医療機器は若い医師たちが一生懸命日本でも開発しようとしましたが、日本には何も残りませんでした。

人間は劣化します。脳が委縮するのです。委縮した脳は、我慢ができにくくなります。新しい事を覚えられなくなり、変化についていけなくなります。例外もいるかもしれませんが、大部分の人間はこの事実から逃れることはできません。私は違うという高齢者は頭部のMRIを撮影してみればいいです。絶対に委縮しています。こういった人たちが国や大企業や病院の方針を決めるのです。うまくいくはずないのではないでしょうか? またノーベル賞を受賞した科学者のほとんどは、賞の対象となる成果を若いうちに出しています。

吉川氏のいう事は、いちいち最もでありますが、少子高齢化の医学的・精神的の背景、年功序列が強すぎるという日本の文化的な背景が欠落しているように感じます。また、社会保障費が膨張していると言いますが、その妥当性については言及されていません。自分が生きて感じる閉塞感の原因について言及は残念ながらありませんでした。若い人間として今の時代を生きていない著者の限界なのかもしれません。

結論としては、本書は非常にわかりやすい、経済学の良書と思います。しかし、年功序列、医学的な高齢者(指導層)の能力的な劣化の影響、削っても幸福には関係ない社会保障費の膨張により研究開発費が削られイノベーションが阻害される事の影響などが、全く触れられておらず、小子高齢化をイノベーションで克服できるというのは、今の日本の現状では到底無理な印象をうけました。高齢者の権利意識については若干言及がありましたが、不十分と思います。

こういった社会を穏便に変えて、イノベーションを起こしやすい社会にできるとすれば、おそらく、高齢者の人間的な質が異常に良い場合に限られるだろうと思います。高齢者が、若手の経済的負担を減らす事に率先して取り組み、自由に実力を発揮できるように一歩引くことができるなら、若手の開発モチベーションを向上させることができるなら、社会保障ではなく、技術革新へお金が回るように気をつかえるなら、少子高齢化は問題ではないと思いますが、まず望めないのではないでしょうか? よって人口減少が経済を縮小しないとは言えません。日本の現状では、恐ろしいほど急速に経済を縮小すると思いますし、人口減少が緩やか、もしくは無いと経済の縮小は小さくなるか、無くなると思います。

ただ、本書で現状打開をどうすればいいのかは明確に分かります。

子育て支援を重視し、人口をコントロールする事、イノベーションを重視する事。高齢者の社会保障はほどほどにすることです。また、本書で面白い事を書いていました。自然界では、生物の寿命は心臓が15億回打つと終わる層です。人間ならなんと42才。人間は科学技術を駆使して80歳以上平均で生きるようになりました。経済学的にもこれ以上の長生きはあきらめなければならないのではないか?と提起しています。至極医学の面からも妥当だと思いました。

吉川氏の他の著書も読んでみたくなった一冊でした。

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